名古屋地方裁判所 昭和58年(行ウ)9号 判決
原告
日本産業株式会社
右代表者代表取締役
河村勇
右訴訟代理人弁護士
酒井俊皓
同
水谷博之
被告
名古屋市長 西尾武喜
右訴訟代理人弁護士
鈴木匡
同
大場民男
右訴訟復代理人弁護士
鈴木雅雄
同
深井靖博
同
中村貴之
事実及び理由
第三 争点に対する判断
一 地積について
1(一)〔証拠略〕によると、本件事業は、戦災復興を目的として、約三四五一ヘクタールの広大な地域(本件事業の施行地区は、事業の途中で変更があり、最終的には右のようになった。)において実施された土地区画整理事業で、戦災復興を目的としているという事業の性格上緊急に施行する必要があったこと、被告は、昭和三一年に、法六六条一項に基づき規程を定めるに当たり、規程一六条一項に、「換地交付の標準となるべき従前の土地各筆の地積は、昭和二〇年八月一五日現在の土地台帳地積による。」との規定を置き、さらに、同条二項に、「土地台帳地積と実測地積とが甚だしく差異があるときは、施行者は、前項の規定にかかわらず地積を査定することができる。」との規定を置いたことの各事実が認められる。
(二) 土地区画整理に当たっては、従前地の実測地積を基準として、換地交付の標準となるべき従前地の地積を定めることが合理的であることはいうまでもない。しかし、右(一)認定のとおり、本件事業は、広大な地域において行われた事業である上、緊急に施行する必要があった。このような場合、実測地積を基準としていたのでは、莫大な労力と費用を必要とし、また計画の実施を著しく渋滞させるから、右(一)の規程のように、原則として公簿面積により換地交付の標準となるべき従前地の地積を定めることもやむを得ない措値であり、特に希望する者に限り、実測面積により得る途が開いてあれば、このような方法による換地処分も憲法二九条に違反するものではないと解される。
(三) 規程一六条二項は、右(一)認定のとおり定めているところ、この規定を、右(二)で述べたところに従って、合理的に解釈すると、この規定は、被告に実測地積を査定する権限を認めたにとどまらず、被告は、組合員から、実測地積が公簿地積と異なることを理由に、主張を裏付ける証拠資料を添えて、実測地積を査定すべき旨の申入れがあった場合には、実測地積を査定しなければならないとの、被告の義務を定めた規定でもあると解すべきである。そして、このように解すると、特に希望する者について、実測面積により得る途が開いてあることになるから、右(一)認定の規程による換地処分も憲法二九条に違反するものではないというべきである。
2 そこで、右1で判示したところに照らして、本件換地処分の換地交付の標準となるべき従前地の地積の定め方が適法があったかどうかについて判断する。
(一) 〔証拠略〕によると次の事実が認められる。
<1> 被告は、昭和二五年一一月二八日付けで、本件従前地について仮使用地の指定をした。仮使用地の位置は、本件換地の位置とほぼ同じであった。そして、被告は、そのころから、本件従前地及びその付近の土地で道路の築造工事等を開始し、それらの工事を行った。
被告は、昭和三〇年二月一〇日付けで、右仮使用地を、特計法一三条に基づく換地予定地に指定した。同年四月一日に、法が施行されたことにより、右仮使用地は、土地区画整理法施行法六条により仮換地とみなされた。
<2> 原告は、昭和四七年三月ころから、後に本件換地A1となる部分(当時はほぼ同じ位置に本件従前地Aを従前地とする仮換地が存した。)並びにその東側、西側及び北側の周辺部分幅約五メートルに盛土をした。そこで、被告は、昭和四七年四月二四日付けで、原告に対し、右仮換地に指定されていた部分以外の盛土をした部分について原状回復を命じた。原告は、右原状回復命令について、愛知県知事に対して、審査請求の申立てをし、原状回復をしなかった。
<3> 原告は、昭和四七年七月、株式会社柴山事務所に対し、本件従前地の測量を依頼した。同社の土地家屋調査士であった加藤健一郎が、原告代表者の指示に基づいて現地で本件従前地の境界を定めて測量したところ、その面積は、一三〇〇・一四平方メートルであった。
<4> 原告は、昭和四七年八月、株式会社柴山事務所に対し、本件従前地の測量を再度依頼した。同社の土地家屋調査士であった加藤銑彦が、原告代表者の指示に基づいて現地で本件従前地の境界を定めて、測量したところ、本件従前地Aの面積は六六一・五二二〇四六平方メートル、本件従前地Bの面積は六四四・七三九二平方メートルであった。原告代表者が指示した境界は、本件従前地Aの北西部分と本件従前地Bの南東部分で、右<3>の測量のときとは若干異なっていた。
なお、右の面積は、昭和二〇年八月一五日現在の土地台帳の地積より、本件従前地Aが六六・四八二〇平方メートル、本件従前地Bが一五三・七三九二平方メートル多い。
<5> 原告代表者は、本件従前地に隣接していた東二葉町一番、東二葉町二番、東二葉町五番の一、東二葉町五番及び東二葉町五番の二並びに本件従前地と水路を隔てて接していた清水町一丁目二三番及び清水町一丁目二四番の三の各所有者に対して、右<4>の測量図面の境界に同意する旨の書面に印鑑を押捺し、その印鑑について印鑑登録証明書を交付するよう求め、各所有者は、これに応じた。
<6> 原告代表者は、昭和四八年一月ころ、右<4>の測量図面、右<5>の同意書及び印鑑登録証明書を、当時名古屋市計画局整地部換地清算第二課長であった黒柳仁(以下「黒柳」という。)のところへ持って行き、これらを示して、本件従前地とその南側の名古屋市が管理していた道路との境界について名古屋市が右<4>の測量図面の境界に同意するよう求めた。原告代表者は、名古屋市の同意が得られれば、本件従前地の地積の更正の登記を申請する予定であった。これに対して、黒柳は、本件事業に伴う工事及び原告の土盛りにより本件従前地の現況が変わってしまっていることを理由に、同意できない旨述べた。
<7> 原告代表者は、昭和四九年末ころ、黒柳に対して、本件従前地の実測面積と公簿面積に大きな差があることを理由に、測量して実測面積を確認すべき旨の申入れをした。そこで、当時名古屋市計画局整地部換地清算第二課登記係長であった中坪宗一、当時名古屋市計画局整地部換地清算第二課換地係長であった板津忠正らが現地に赴いて、本件従前地の測量を試みた。しかし、本件事業に伴う工事及び原告の土盛りにより状況が変わってしまっていた上、原告代表者が指示した境界について隣地所有者が同意しないといったことがあったため、隣地との境界を確定して本件従前地を測量することはできなかった。
<8> その後、名古屋市において、別図一の黄色の線で囲まれた部分を測量したところ、その面積は、一五六九四・二〇平方メートルであり、その部分の土地台帳の地積と水路敷等の面積を集計した地積の合計一五七四七・五五平方メートルとほぼ一致していた。
<9> そこで、被告は、換地交付の標準となるべき本件従前地の地積を、規程一六条一項に基づき、昭和二〇年八月一五日現在の土地台帳地積によって定め、本件換地処分をした。
(二) また、〔証拠略〕によると、次の事実が認められる。
<1> 本件従前地の南側部分は道路に接しており、境界がはっきりしているので、右(一)<3>の加藤健一郎が作成した測量図面(甲四)上の本件従前地を、昭和二一年から昭和二三年の間に本件事業のために作成された本件従前地及びその周辺の土地の図面(乙四)上に、本件従前地の南側の道路に接する部分を合わせて重ね合わせると、右(一)<3>の測量図面上の本件従前地は、右本件事業のために作成された図面に記載されている本件従前地以外の土地上の建物の敷地の一部を含むことになる。
<2> 太子寺は、本件従前地と水路を隔てて北側で接していた清水町一丁目二四番の三の土地及び右土地上の建物を所有していたところ、昭和四七年三月ころにこの建物を取り壊したのであるが、原告が右(一)<3><4>の測量図に基づき本件従前地であると主張している範囲には、右取り壊された建物の跡地の一部が含まれる。
なお、原告代表者は、昭和三七、八年ころに、太子寺の建物の一部が本件従前地上に建てられたので、原告代表者が当時の太子寺の代表役員であった星野融齋(以下「星野」という。)に抗議したところ、星野は、いつでも立ち退く旨約した旨供述するが、これに反する証人宮川正治の証言に照らし、また、右約束を裏付ける書証等が提出されていないことからして、原告代表者の右供述は、採用することができない。
(三)<1> 右(一)認定の事実からすると、原告は、被告の補助機関である名古屋市の担当職員に対して、本件従前地の実測地積が公簿地積と異なることを理由に、実測地積を査定すべき旨の申入れをしたものであり、主張を裏付ける一応の証拠資料(右(一)<4>の測量図面並びに右(一)<5>の同意書及び印鑑登録証明書)も示していることが認められる。
しかし、右(一)認定のとおり、本件事業に伴う工事及び原告の土盛りにより本件従前地の現況は施行前の状況から変化していた上、原告と隣地所有者との間に境界について争いがあったため、隣地との境界を確定して本件従前地を測量することはできなかったものである。
<2> また、右(二)認定の事実に右(一)<7>の事実を総合すると、右(一)<3><4>の測量図面が本件従前地の状況を正確に図面化したものであると認めることには、非常に大きな疑問があるといわざるを得ない。
なお、〔証拠略〕によると、本件従前地及びその周辺の土地の公図の記載からすると、本件従前地の東に存する名古屋市北区と東区の境界線の西方向への延長線上に本件従前地の北側の境界が存することが認められるところ、原告は、右(一)<3><4>の測量図の本件従前地の北側の境界は、本件従前地の東に存する名古屋市北区と東区の境界線の西方向への延長線上に存すると主張し、それに符合する〔証拠略〕も存するが、仮にそうであるとしても、いわゆる公図は、土地のおおよその位置関係や形状はともかく、それ以外の事項については正確でない場合も多いから、右公図の記載に基づく主張が認められたとしても、そのことは、右(一)<3><4>の測量図面が本件従前地の状況を正確に図面にしたものであると認めるには大きな疑問がある旨の右判断を左右するものではない。
<3>以上述べたところからすると、被告は、原告からの証拠資料を添付してされた申入れに基づき、現地で測量して本件従前地の実測地積を査定しようとしたが、できなかったものであり、また、原告が示した証拠資料(測量図面)は右のとおり必ずしも信用できるものではなかったので、被告においてこれを基に更に調査をしておれば本件従前地の実測地積を確定することができたとも認められないから、被告が、換地交付の標準となるべき本件従前地の地積を、規程一六条一項に基づき、昭和二〇年八月一五日現在の土地台帳地積によって定めて、本件換地処分をしたことをもって違法とすることはできない。
二 位置、利用状況、環境等について
1(一) 〔証拠略〕によると、次の事実が認められる。
<1> 本件従前地は、一団の土地で、別図一のとおり間口に比べて奥行きが非常に長い長方形の土地であり、南側で幅約二・七メートルの道路に面するのみであった。また、本件従前地一帯は、道幅の一定しない狭い道路しかない上、公園等の公共の空地もなく、区画も整然としていなかった。
<2> 本件換地は、本件従前地の原位置に定められ、本件換地A1は、間口六・五六メートル、奥行きが東側で二七・二七メートル、西側で二八・九九メートルの長方形の土地で、南側で幅六メートルの道路に面している。また、本件換地A2は、間口一六・四二メートル、奥行き一五・一六メートルの土地で、北側で幅六メートルの道路に面しており、本件換地Bは、間口一五・七二メートル、奥行きが東側で一九・九六メートル、西側で一九・〇五メートルの土地で、南側で、幅四メートルの道路に面している。本件換地A2と本件換地Bは、北側と南側の二方で道路に面する一団の土地となっている。
本件換地の付近一帯は、本件換地の西方約七〇メートルに幅三〇メートルに拡幅された道路(東郊線)があるほか、南方約二〇〇メートルに幅三〇メートルに拡幅された道路(新出来町線)があり、また、幅員が四メートル、六メートル、八メートルの街路が縦横に新設又は拡幅整備され、各街区は整然と区画されている。
さらに、本件換地の北方約一五〇メートルには清水第二公園が、東方約二〇〇メートルには長久寺第二公園が新設されるなど公共の空地も設けられている。
(二) 右(一)認定の事実からすると、本件換地は、本件従前地の原位置に定められ、本件換地処分により、交通、防災、衛生等の状態及び環境は格段に良好なものとなったことが認められる。そして、このことに、本件従前地は間口に比べて奥行きが非常に長い土地であったこと、これに対し本件換地A2及び本件換地Bはほぼ正方形の土地であること等を併せ考えると、本件従前地全体と本件換地全体を比べた場合、土地の利用価値は格段に高まったということができる。
原告は、本件従前地を一団の土地として利用していたところ、本件換地は道路によって分断され、利用しにくくなった旨主張するが、一団の土地としての本件従前地は、別図一のとおり南北に奥行きが非常に長い土地であったのであるから、その南北方向の中間部分に道路を設けることによって、土地を利用しやすくなったということができる。したがって、右主張は採用できない。
また、原告は、本件換地A1は、間口が狭く、奥行きが長い、軌道敷のような形状の土地であるため、工場、事務所等の敷地として利用できない旨主張するが、本件換地A1の間口は六・五六メートルあるから、本件換地A1がおおよそ利用できないということはない。もっとも、本件換地A1は、間口に比べて奥行きが長いということができるが、そういうことがあるとしても、本件従前地全体と本件喚地全体を比べた場合、右のとおり土地の利用価値は格段に高まったということができる。
2(一) 〔証拠略〕によると、次の事実が認められる。
<1> 被告は、本件換地処分をするに当たり、路線価式評価方法によって、各従前地と換地の評価をした。この方式は、各路線(道路)について指数を設け、この指数を基に、個々の土地についてその土地の条件を考慮してその土地の一平方メートル当たりの指数を算定し、これに、面積及び指数の単価を措けて、土地の評価額を算出する方式である。
<2> 本件事業の各筆土地評定価格算出基準に基づいて、右<1>の方式で指数を算出したところ、本件従前地の一平方メートル当たりの指数は二・六三、本件換地A1の一平方メートル当たりの指数は三・四五、本件換地A2及び本件換地B一平方メートル当たりの指数は三・七五であった。
(二) 原告は、本件換地A1は間口が狭く不整形な利用価値の乏しい土地であるから、この土地を評価する際には、間口狭小修正や不整形修正がされるべきであるのに、本件換地処分に当たりされた評価では、そのような修正はされておらず、右評価は誤ったものである旨主張する。しかし、本件換地A1の間口は六・五六メートルあるから狭小とはいえない。また、〔証拠略〕によると、本件換地A1の奥行きが深い点は、右(一)<2>の指数を算出するに当たって、奥行逓減率を掛けることによって考慮されているものと認められるし、それ以外に本件換地A1について特に形が不整形であるとすべき事情はない。したがって、原告の右主張を採用することはできず、他に右(一)の評価を誤りとすべき事情は認められない。
(三) 右(一)認定の本件従前地の一平方メートル当たりの指数に、本件従前地Aの面積を掛けると一五六四・九五五二、本件従前地Bの面積を掛けると一二九一・三三となり、この合計は二八五六・二八五二である。一方、本件換地A1の一平方メートル当たりの指数及び本件換地A2の一平方メートル当たりの指数に、それぞれの土地の面積を掛けて合計すると一五六〇・九四三五となり、本件換地Bの一平方メートル当たりの指数に本件換地Bの面積を掛けると一一六三・四七五〇となり、これらを合計すると二七二四・四一八五となる。したがって、本件従前地と本件換地を比べた場合、評点において大きな差はないということができる。
3 以上述べたところを総合すると、本件従前地は、換地処分によって、三一・七四パーセントの減歩になった(本件従前地全体と本件換地全体を比べた場合の減歩率が右のとおりであることは当事者間に争いがない。)のであるが、右1のとおり土地の利用価値は格段に高まったものと認められ、また、本件従前地と本件換地の評点は右2のとおり大差がないから、本件換地は、本件従前地に照応しているということができる。
なお、原告は、昭和二四年ころ道路を建設するに当たり、被告は、本件従前地Aにあり、二六〇〇トン余りの澱粉粕が貯藏してあった原告の地下貯蔵庫を破壊して、原告に多大の損害を与えた旨の主張をするが、そのような事実があるとしても、本件換地は本件従前地に照応しているとの右判断を左右するものでないことは明らかである。
また、原告は、本件換地付近には多くの保留地があるところ、地価の高騰により、被告は、保留地を全部売却しなくとも本件事業の費用を賄うことができるのであるから、このような多くの保留地は必要ではない旨の主張をするが、保留地は、事業計画において予定地積を定めた上、換地計画において具体的な位置等が定められるものであり、弁論の全趣旨によると、本件事業においても換地計画において保留地について具体的な位置等を定められたことが認められ、それについて違法な点があるとすべき事情を認めるに足りる証拠はないから、保留地の定め方を理由として本件換地処分が違法であるということはできない。
三 横の照応原則違反について
1 前記第二の二2(一)<1>で原告が主張するとおり、被告が一団の土地でなかった従前地について、一団の土地又は一筆の土地とする換地処分を行ったことは、当事者間に争いがない(以下、これらの換地処分を「原告主張(一)<1>換地処分」という。)。そして、〔証拠略〕によると、被告は、前記第二の二2(一)<2>で被告が主張する理由により、原告主張(一)<1>換地処分を行ったことが認められる。右認定の理由によると、原告主張(一)<1>換地処分が不合理であるということはできず、他に原告主張(一)<1>換地処分が不合理であるとすべき事情を認めるに足りる証拠はない。したがって、原告主張(一)<1>換地処分に比べて、本件換地処分が社会通念上許容されない程著しく不利益なものであるということはできない。また、原告主張(一)<1>換地処分がされた結果、直接かつ具体的に原告が本件換地処分について不利益を被ったとすべき事情を認めるに足りる証拠もない。
2 本件換地処分による本件換地Bの減歩率は、三六・八一パーセントであり、本件換地の平均減歩率は、三一・七四パーセントであることは、当事者間に争いがない。
〔証拠略〕によると、前記第二の二2(二)<1>イで原告が主張するとおり、換地処分により面積が増加している土地や換地処分による減歩率が本件換地よりも少ない土地があることが認められる(以下、これらの換地処分を「原告主張(二)<1>イ換地処分」という。)。そして、〔証拠略〕によると、被告は、原告主張(二)<1>イ換地処分において、前記第二の二2(二)<2>イで被告が主張する事情を考慮して、換地を定めたことが認められる。右認定の被告が考慮した事情によると、原告主張(二)<1>イ換地処分が不合理であるということはできず、他に原告主張(二)<1>イ換地処分が不合理であるとすべき事情を認めるに足りる証拠はない(原告は、原告主張(二)<1>イ換地処分が不合理である旨主張し、原告代表者本人はその旨の供述をするが、提出された〔証拠略〕を併せ考慮しても、これらは、右判断を左右するものではない。)。したがって、原告主張(二)<1>イ換地処分に比べて、本件換地処分が社会通念上許容されない程著しく不利益なものであるということはできない。また、原告主張(二)<1>イ換地処分がされた結果、直接かつ具体的に原告が本件換地処分について不利益を被ったとすべき事情を認めるに足りる証拠もない。
〔証拠略〕によると、前記第二の二2(二)<1>ロで原告が主張する他の換地(以下「原告主張(二)<1>ロ換地」という。また、これらの換地についての換地処分を「原告主張(二)<1>ロ換地処分」という。)については、その減歩率は、本件換地処分の平均減歩率(三一・七四パーセント)よりも高いことが認められ、その点では、本件換地よりも不利益となっている。他方、本件換地も右二で述べたとおり本件従前地に比べて土地の利用価値が格段に高まっている。したがって、原告主張(二)<1>ロ換地について原告が前記第二の二2(二)<1>ロで主張するような事情があるとしても、原告主張(二)<1>ロ換地処分に比べて本件換地処分が社会通念上許容されない程著しく不利益なものであるということはできない。また、原告主張(二)<1>ロ換地処分がされた結果、直接かつ具体的に原告が本件換地処分について不利益を被ったとすべき事情を認めるに足りる証拠もない。
本件換地の近隣に前記第二の二2(二)<2>ハで被告が主張する各換地が存し、その減歩率が被告主張のとおりであることは、当事者間に争いがない(以下、これらの換地を「被告主張(二)<2>ハ換地」といい、これらの換地についての換地処分を「被告主張(二)<2>ハ換地処分」という。)。本件換地は右二で述べたとおり本件従前地に比べて土地の利用価値が格段に高まったのであるから、被告主張(二)<2>ハ換地について原告が前記第二の二2(二)<3>ロで主張するような事情があるとしても、被告主張(二)<2>ハ換地処分に比べて本件換地処分が社会通念上許容されない程著しく不利益なものであるということはできない。また、被告主張(二)<2>ハ換地処分がされた結果、直接かつ具体的に原告が本件換地処分について不利益を被ったとすべき事情を認めるに足りる証拠もない。
3 右二2で認定したとおり、本件換地処分に当たりされた評価における本件換地A1の一平方メートル当たりの指数は、三・四五であるところ、〔証拠略〕によると、本件換地処分に当たって右指数の一点は一七〇〇円と評価されたから、本件換地A1の一平方メートル当たりの評価額は五八六五円であったことが認められる。一方、〔証拠略〕によると、換地処分をするに当たってされた評価における本件換地A1の西隣の白壁三丁目六二〇番の換地の一平方メートル当たりの評価額は五六七八円であったことが認められる。弁論の全趣旨によると、白壁三丁目六二〇番の換地は、本件換地A1よりも、奥行きが深いことが認められるから、右のような評価額の差異があることから直ちに、白壁三丁目六二〇番の換地についての換地処分に比べて本件換地処分が社会通念上許容されない程著しく不利益なものであるということはできない。また、白壁三丁目六二〇番の換地についての換地処分がされた結果、直接かつ具体的に原告が本件換地処分について不利益を被ったとすべき事情を認めるに足りる証拠もない。
4 以上のとおり、他の土地についての換地処分に比べて本件換地処分が社会通念上許容されない程著しく不利益なものであると認めることも、他の土地についての換地処分がされた結果、直接かつ具体的に原告が本件換地処分について不利益を被ったと認めることもできないのであるから、原告が横の照応原則違反である旨主張する点は、いずれも、本件換地処分の違法事由とはならない。
第四 総括
以上の次第で、原告の請求はいずれも理由がないから、これを棄却することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 岡久幸治 裁判官 森義之 田澤剛)